【LP】Dmitri Khvorostovsky Arias from Operas (追記あり)

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(※2/13 追記あり。記事に赤字で記しています。)

とてもレアなものを見つけてしまいました。
ボリショイ劇場で1990年に行われたコンサートを収録したLPです。
ヤフオクで出品されていたものを検索でたまたま見つけました。

レコードプレイヤーは持っているのでLPはまだ聴けますし、お値段もそう高くなかったのですが、保存やお手入れが大変かなぁ…と初めは落札に少し躊躇してしまいました。
しかし、LPだからこその値打ちがあるのでは?
そして、これはロシアで発売されたもので今ではおそらく手に入らない貴重なものかもしれないし、ライヴ録音というのも魅力。
…そう思い始めると、今度はどうしても欲しくなってしまいました。

結果、私しか入札者はおらず、あっけなく落札。
すぐに発送され、あっという間に手に入れることができました。
状態はとてもよく、レコード特有の温かい音が魅力的です。

曲目や解説はロシア語と英語の両表記があってわかりやすいです。

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解説文の中に彼が歌った国として、ちゃんと日本が明記されていたことにはとても感激しました。
彼の初来日は1990年7月でしたが、このレコードが収録されたのは同年9月。
レコードリリースまでに日数はあったでしょうが、そんな直前のコンサートのことまで記録されていてとても嬉しかったです。


<演 奏>
Dmitri Khvorostovsky ディミトリー・ホロストフスキー (バリトン)
The Stanislavsky and Nemirovich-Danchenko Musical Theatre Orchestra
Evgeni Kolobov (指揮)

[録音:1990年9月11日 USSR Bolshoi Theatre (ライヴ)]

<曲 目>
◆Bellini : Overture to the Opera "Il Pirata"
◆Verdi : Germont's Aria ("La Traviata", Act 2)
◆Verdi : Conte di Luna's Aria ("Il Trovatore", Act 2)
◆Verdi : Rodrigo's Death ("Don Carlos", Act 4)

◆Rossini : Overture to the Opera "Il Barbiere di Siviglia"
◆Verdi : Miller's Scene and Stretto ("Luisa Miller")
◆Rossini : Figaro's Aria ("Il Barbiere di Siviglia", Act1)  


以前は彼の90年代の若い頃の録音はあまり好んでは聴いていなかったのですが、今は最近の録音を聴くのが苦しいこともあり、若い頃の録音をよく聴くようになりました。
その中で最近のお気に入りは、デビューアルバムのTchaikovsky & Verdi Arias。こちら↙のCDです。

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今回購入したLPと、このデビューアルバムに収録されているヴェルディのアリアがかぶっていることもあり、余計にこのLPに興味をそそられました。

LPに収録されているのは、オケのみの演奏も含めて全てイタリア・オペラ。
ボリショイ劇場で歌うというのに1曲もロシアものを入れていないのは、彼のこれからのレパートリーに対する決意の表れでしょうか。

なお、デビューアルバムとこのLPで違うのは1曲。
「マクベス」のアリアがLPでは「セビリアの理髪師」のフィガロのアリアとなっています。

デビューアルバムも1990年録音ということでこのLPと時期は変わらないのですが、やはりスタジオ録音とライヴの違いは感じます。
スタジオ録音では落ち着いて歌っているという印象ですが、このボリショイでのライヴは張り切ってるなぁ~という印象。
力強さを前面に押し出していて、それはそれで大変魅力的です。

ヴェルディ・バリトンの宿命として父親役は避けて通れないものですが、「椿姫」のジェルモンは彼にとって特別な思いのある役だったようです。
クラスノヤルスク時代からよく歌っていたジェルモン。
40代になっても「若すぎる」「役に合わない」と言われるほど、私達ファンにとってもイメージに合わない役でしたが、もしかしたら生涯で最も多く歌った役かもしれません。

METで2012年にデッカーのプロダクションで歌ったジェルモン。
あの名演は今でも忘れることができません。
そして....彼の最後のオペラとなったのもジェルモンでした。

このLP収録当時、彼は当時まだ28歳になろうとしていた頃。
さすがに青年の若々しさにあふれたジェルモンで力みもありますし、到底まだ父親としての威厳も感じることはできません。
しかし、なぜか私はこの若々しいジェルモンの歌に魅せられました。
この曲のもつ美しさを、若い彼の歌によって教えられたような気がします。

なお、このコンサートでは同じく「椿姫」から2幕のジェルモンとヴィオレッタの二重唱も歌っているようですが、レコードには収録されていません。
※追記:このコンサートはソプラノのNatalya Troitskayaとのデュオコンサートだったようで、レオンカヴァッロ:「道化師」よりネッダとシルヴィオの二重唱も歌っていました。

「イル・トロヴァトーレ」のルーナ伯爵は、オネーギンと並んで彼の代名詞となりました。
しかし、データベースを見ていると若い頃はそれほど歌っていないようで、40代になってから急激に増えた役のようです。

美しい見事なアクートは若い頃の彼の特徴の一つでした。
このコンサートでもレチタティーヴォの最後、"Leonora è mia"のところでGまで上げています。
デビューアルバムに収録された同曲では最後のカデンツもAまで上げていますが、ここではそれはしていません。

全体的にテンポは速めで溜めも少なく、間の取り方もあっさり。さら~っと歌っています。
後年、彼はこのアリアはとても難しいと語っていましたが、おそらくこの当時はその難しさにまだそれほど気づいていないかもしれません。

「ドン・カルロ」のロドリーゴも生涯を通じてよく歌った役でした。
中でもこのロドリーゴの死の場面は、コンサートなどでも非常によく取り上げた曲でした。

1989年のカーディフコンクールでこの曲を歌った時には、彼のロングブレスが大変注目されたそうです。
"Io morrò~"からの4小節ノンブレス。これを彼は後年もずっと貫き通していました。

ここまで聴いた3曲の中では、このロドリーゴのアリアが若い彼の声に一番合っているような気がしました。
彼はとても美しいレガートを持っている人でしたが、その特徴がこのアリアで一番活かされているように思えたのです。

最後は"Ah!"でこと切れるのではなく、"Ahimè!"としっかり声を張り上げて伸ばしています。
彼は若い頃力みが目立つ歌唱だったようで、彼のことを"sempre forte"と揶揄する人もいたようです。
それがベルカント・オペラでは災いして、ベッリーニの「清教徒」リッカルド役ではブーイングも受け、批評も散々だったことがあるそうです。

彼自身、「若い頃の自分は自信たっぷりで、ほかの人に分けてあげたいぐらいだった。」という通り、この頃の彼の歌はどれも勢いがあって自信にあふれています。

「ルイザ・ミラー」のミラーは、おそらくオペラの舞台では演じていないと思います。
この"Sacra la scelta"もデビューアルバムとこのLP以外では聴いたことなく、コンサートでもごく若い時にしか歌っていません。

彼にはこのように、ある時期から歌わなくなってしまったヴェルディのアリアがいくつかあります。
「マクベス」、「スティッフェリオ」のスタンカー、「群盗」のフランチェスコなど。
そんな中でもこのルイザ・ミラーは後年ほぼ歌っていない、いわばお蔵入りともいえる曲ですので、録音が残ったことはとても嬉しく思います。

私は恥ずかしながらこの「ルイザ・ミラー」をまだ見たことがなく、この曲もほかの人で聴いたことがないのですがとても気に入ってしまいました。
ミラーは父親役ですし、ジェルモン同様まだしっくりこない年齢ではありますが、朗々とした歌いっぷりには聞き惚れるしかありません。
年齢を経た彼がこの歌をどのように歌うのか、もう一度聴いてみたかったですが…もう叶うことはありません。

「セビリアの理髪師」のフィガロは、彼の違う魅力を伝える重要な一曲だと思います。
彼は一見似合わなそうなこのフィガロのカヴァティーナを、若い時には意外にもよくコンサートで取り上げていました。
METで歌いたいとゲルブ氏にも訴えたことがあるものの、ゲルブ氏はいい返事をしなかった…とインタビューで語っていたこともあります。

声が重くなってきたこともあり、40代になってからはほとんど歌わなくなったように思いますが、2010年に自身がプロデュースするフレンズコンサートで「セビリアの理髪師」のアンサンブルを披露したのは記憶に新しいところ。
さすがに声は重くなっていましたが、生き生きと楽しそうに歌っていたのを見て、こちらもつい笑顔になったことを思い出します。

暗めの声とノーブルな雰囲気からコメディを演じるイメージはありませんでしたが、本人はコメディもやりたかったようです。
このコンサートでも楽しそうに歌っている様子が伝わりました。

冒頭の"La ran la lera"…で衝撃。なんて気品ある床屋さんなのでしょう!
改めて彼の声の美しさに驚かされます。
そんな声で軽々と歌い上げる…歌うのが楽しくて仕方ないって感じです。

"Figaro, Figaro, Figaro....."悪乗りしてますね~
いったいどんな顔して歌ってるんでしょう。
※追記:実はこのコンサート、映像もYouTubeにアップされていました。現在Dimaが歌っているクリップは2~3しか見られなくなっていますが、このフィガロは残されていましたのでこちらに貼っておきます。わりと普通の顔して歌ってましたね



28歳になる1か月前のDima。
若さ、勢い、力強さ、そして歌うことの喜びにあふれています。
カーディフで優勝して世界の注目を浴び、やってやるぜ!ってところでしょうか。
ここに、間違いなくダイヤモンドの原石が存在しています。

この時代から彼を応援していたかったと強く思います。
私が彼の歌に出会うのは、このコンサートから13年後のことになります。

なお、このLPの音源はYouTubeにアップされていました。
落札を迷っている時にロシアのファンの方に教えてもらいましたが、私はやっぱり現物を手に入れることを選びました。
皆様もぜひ、若い彼の美しい声を聴いてあげてください。



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