【CD】チャイコフスキー:スペードの女王
<演 奏>
ゲルマン … ヴィターリ・タラシチェンコ
リーザ … ナターリャ・タツコー
伯爵夫人 … イリーナ・アルヒーポヴァ
エレツキー公爵 … ドミトリー・ホロストフスキー
ポリーナ … ニーナ・ロマノヴァ
トムスキー伯爵 … グリゴリー・グリチュク
指揮: ウラディーミル・フェドセーエフ
ユルロフ記念国立アカデミー合唱団
モスクワ放送交響楽団
[録音: 1989年12月25日 モスクワ音楽院ホール(ライヴ)]
2017年に亡くなったホロストフスキーの追悼として、そのモスクワ・デビューとなった公演のライヴがCDで登場。メロディア・レーベルからは初めての発売となります。
イタリア・オペラ、特にヴェルディでの評価が高かったホロストフスキーですが、第2幕で有名なアリア「貴女を愛しています」を歌う「スペードの女王」でのエレツキー役は、彼の最初の当たり役として国内外各地で絶賛されたものでした。27歳のホロストフスキーによる、初々しさを残しながらも奥深い歌声をお楽しみいただけます。
フェドセーエフの指揮による力強い演奏は、かつて他レーベルから発売された際、「スペードの女王」初めてのCDとして大いに歓迎されたものです。 (発売元ナクソスによるPRコメントより)
1989年と言えば、Dimaはカーディフ国際コンクールで優勝した年。
その年の暮れには、彼はモスクワ・デビューを飾っていたということになります。
会場がモスクワ音楽院の大ホールということからもわかる通り、この公演はコンサート形式で行われました。
ちなみにDimaがオペラの舞台でモスクワ・デビューしたのは、ヘリコン・オペラでの「エフゲニー・オネーギン」だったそうです。
メロディアというレーベルはロシア最大のレコード・レーベル、CD出版社だそうですが、今後もこのようなDimaの秘蔵録音をリリースしてくれるのでしょうか?期待したいです。
実は私は「スペードの女王」のCDを持っていません。
Dimaは1991年に小澤征爾指揮で、フレーニ、アトラントフ、レイフェルクスと共演したCDにも出演していますが、Dimaが演じるエレツキーの出番が少ないことや、当時「スペードの女王」にあまり関心がなかったため、食指が動きませんでした。
そして、今回もそれほどこのCDに期待はしていませんでした。
Dimaも27歳と大変若いですし、先に紹介したCDのようなスター歌手も出ていませんから。
しかし、個人的にはかなり【当たり🎯】でした。
「スペードの女王」はDimaがMETで歌った時の映像を持っていますし、ボリショイの来日公演や、昨年本場のボリショイ劇場でも観ています。
しかし、こうやって音楽だけに集中して聴くことは初めてでした。
当たり前ですが、やっぱりチャイコフスキーですね…。音楽が本当に美しいです。
退屈だと感じていた1幕2場のポリーナが出てくるシーンも、美しいメロディーにあふれていることに改めて気づかされました。
Dimaとアルヒーポワ以外知ってる歌手はいませんでしたが、なかなか粒ぞろいのキャストです。
殊に、リーザを歌ったタツコーは印象的でした。
俗に言うスラヴ声とでもいうのでしょうか、ソプラノの金属的な響きがなく、ちょっとネトレプコを思い出しました。
ゲルマンのタラシチェンコは、時折「ん?」と思う瞬間もありましたが、嫌いな声ではありませんし、長丁場のこの役をよく演じきっていたと思います。
ポリーナのロマノヴァの柔らかい声も魅力的でしたし、アルヒーポワの伯爵夫人が聴けるのも貴重。
アルヒーポワはカーディフの時の審査員で、その後もDimaを可愛がって引き上げてくださった恩人でもあります。
トムスキーには2つのソロがありますが、Dimaは近年エレツキーよりトムスキーをよく歌っていましたので、ほかの人でトムスキーを聴くのは抵抗がありました。
しかし、グリチュクのトムスキーは低音が朗々と響き、素晴らしい出来でした。
1幕の「3枚のカード」のアリア、良かったのに拍手がまばら…なぜでしょう?
そしてDimaのエレツキー。
さすがに27歳。今まで何度も聴いていたDimaの声とは違い、すぐにDimaとはわかりませんでした。
しかし、「え!これ誰!?」という反応をしてしまうのです。
27歳にして、これほど声に気品を漂わせているのには驚きです。
聴きなれている深みのあるDimaの声とは違いますし、これほど若い時の録音なら大丈夫だと思いましたが…やっぱりアリア"Я вас люблю"は涙が止まりませんでした…。
何度この曲を聴いたでしょう…いろんな思い出が蘇ります。
最後のロングトーンはやはり素晴らしいですね…。
この無理のない自然なロングトーンはカーディフの時でも話題になりました。
彼が"Ombra mai fù"を歌った時、ある審査員の採点表には【!】がびっしり並んでいたというエピソードもあります。
この「スペードの女王」、強烈な印象はありませんが何度も聴きたくなります。
聴けば聴くほど味が出て病みつきになります。
Dimaが亡くなってから手に入れたCDはもう1枚、ウィーン国立歌劇場でのパフォーマンスをライヴ収録したものがあるのですが、こちらは当然のことながらDimaの歌ばかりで、私が実際に現地で聴いたものも入っているため、まだ聴けずにいます。
でも、近いうちに聴くつもりでいます。
亡くなってからもCDは出てくるのですね…。
今後も、Dimaの新しい録音を聴く機会があったら、こちらのブログを更新したいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
最後に、2011年にボリショイのリオープニング・ガラで歌った"Я вас люблю"を貼っておきます。
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