【METライブビューイング】 ヴェルディ:「イル・トロヴァトーレ」(Part1)

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2015年10月31日(土)午前10時開演
福岡中州大洋映画劇場
【MET上演日:2015年10月3日】

<出 演>
マンリーコ.................ヨンフン・リー
レオノーラ.................アンナ・ネトレプコ
ルーナ伯爵...........ディミトリ・ホヴォロストフスキー
アズチェーナ.................ドローラ・ザジック
フェルランド................ステファン・コツァン
Ines....................Maria Zifchak
Ruiz....................Raul Melo
Messenger...............David Lowe
Gypsy...................Edward Albert

<指 揮>
マルコ・アルミリアート

<演 出>
デイヴィッド・マクヴィカー


何から書けばいいのか・・・何を書けばいいのか・・・・。
いろんな気持ちがこみ上げてきて、なかなか文章にまとめることができません。

Dima(ホロストフスキー)が6/25に脳腫瘍罹患を発表した時、私は最初「え?」っていう感じで、すぐにショックを受けたわけではないのですが、だんだん少しずつ実感がわいてきて、ステージ3という報道に「Dimaが死んでしまうかもしれない」ということが頭に浮かんだ時の衝撃を、どんな言葉で表せばいいのかわかりません。

毎日のように聴いていた彼の録音も、「この歌声が二度と聴けなくなるのか」と思うと、聴く度に涙が止まらなくなり、しばらくは彼の歌も聴くことができなくなりました。

しかし、彼が「決して諦めない」「勝つまで闘う」と宣言していることを知り、私たちファンも絶対に諦めてはいけない!と気持ちを強く持つようにしました。

最近、数人のオペラ歌手が長期キャンセルをしている話を聞きますが、理由がはっきりしないことが多いです。
なので、Dimaのように脳腫瘍とという大変な病気を公表して、療養に入るケースは珍しいように思います。

そのことにも驚いたけど、こうやっていざ復帰公演に接してみると、もしかして彼は病気を公表することで目標を立て、自分を鼓舞しようとしたのかもしれない・・・と思うようになりました。

当初予定されていた6回の公演中3回をキャンセルし、合計3回の公演に全力を注いだDima。
まだ全快したわけではなく、来年2月まで治療が続く・・・いわば闘病中。
もっと抑えるかと思っていたのに、渾身のパフォーマンスで感動を与えてくれた・・・本当に凄い、素晴らしいアーティストです!

このトロヴァトーレは2011年にもライブビューイングになっていて、Dimaはその時に既に完璧に演じていたので、正直あのパフォーマンスを超えられるのか不安でした。

しかし・・・超えましたね!
役のアプローチも変えてきて、また完璧を塗り直したって感じ。
同じ役でもいろんな引き出しがあるんだ~。

先に初日をMETで観たファンの方曰く、「今回の伯爵は正統派、前回よりずっと大人の男性という感じ。」とのことでしたが、その言葉通り!

前回は【クレイジーな伯爵】を強調した濃い演技が印象的だったけど、今回は本当にレオノーラを愛するがゆえの行動というのがよく伝わり、ある意味前回より説得力があったかもしれません。

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いつも目立つ小芝居も控えめで、演技も歌唱も「やりすぎない」ようにしている感じ。
言葉の一つ一つに説得力があるから歌にドラマがあり、余計なことをしなくても歌だけて伝わるものがあります。

52歳(当時)にして、まだ進化し続けるDima。
私は今年でファン歴12年になりますが、ずっと応援し続けてきたことを誇りに思い、12年経った今、一番Dimaのことを尊敬し、愛していることを実感しています!

前置きが長くなりました
そろそろ本題に・・・。

■オープニング
今回のホストはスーザン・グラハム。
開幕前に、総裁のピーター・ゲルブに話を聞く。

ゲルブが「METで歌うことはとても勇気が要ること」と話し、続けてDimaが脳腫瘍罹患を発表しながらも、この舞台に立つことを「とても勇敢な行為」と称えてくれたことに既に涙腺がゆるむ私・・・・。

■第1幕
こっつぁん(コツァン)はね・・・・。
この人、結構カッコいいし、声も決して悪くないんだけど、棒読みのような一本調子の歌い方がどうにもこうにも・・・

このオペラの背景を説明するフェルランドの大事な場面だけど、もうちょっとドラマを感じさせてもらえないものかしら・・・。

・・・って、毎回同じことを言ってるような気がする

アンナちゃん(ネトレプコ)のレオノーラ登場。
今回レオノーラがアンナちゃんで本当に良かった!

太っただのなんだかんだ言っても、やっぱり彼女は可愛いし、高音はキンキンしないから頭にズキズキ響かないし、演技に品格があります。
前回のソンドラねえさん(ラドヴァノフスキー)は庶民派って感じだったけど、アンナちゃんは貴族階級の雰囲気がありました。

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ルーナ、マンリーコとの三重唱で、前回ソンドラねえさんがルーナの手に噛みついたところは、単に手を振り払うだけに変えられてました。(稽古風景では噛みつく演技してたけど)
やっぱ女官が男性に噛みついちゃいかんよね・・・・

それからルーナに倒されるところも、ねえさんみたいにゴロ~ンと(自分で)転がるのじゃなく、崩れ落ちるように倒れたのもGood!
こういう女性らしい動きは、アンナちゃんのほうが断然良かった!

今回、「これHDで流しちゃっていいの?」っていうシーンがいくつかあったんですが、その1つ目がこれ。

レオノーラが"Tacea la notte"を歌ってると、何やら床に銀色に光るものが・・・。
あとで友達から聞いて知ったのですが、前の場面で衛兵がお弁当箱か何かを落としていったらしく、それがずっと床に残っていたそうな・・・あちゃ~

イネス役のジフチャックさん、レオノーラのヴェールでそっと拾うところが映っちゃいました

ルーナ伯爵登場。

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初日、2日目と続いて今回も登場シーンで拍手の嵐。
指揮のマルコ(アルミリアート)はオケを止め、Dimaも素に戻ってニッコリ
軽く会釈をし、仕切り直して歌い始めます。

初日のラジオ放送ではこの拍手で涙腺崩壊。
復帰がMETで本当に良かった!と思える瞬間。
当然、わかっていても映画館で涙腺ゆるみます

通のオペラファンは拍手で音楽を止めるなんて何事か!と仰るでしょうが、私はMETのこういうところが大好き。
確かにやりすぎな時もあるけど、喝采を浴びて嬉しくないアーティストがいるでしょうか。
いいパフォーマンスを生むには、観客の愛が必要な時もあると思います。

ここでのDima、貫録たっぷりの堂々とした伯爵ぶりに目を見張ります。
無駄な動きを廃し、落ち着きと余裕があります。

その余裕は声のほうにも表れています。
元々声には病気の影響はなかったようですが、舞台は休み、その代わりに発声の基礎訓練を毎日行っていたそうで、それが非常にいい状態で表れているように思いました。

無理をしなくてよくなった分、力の抜けた自然な演技ができているように思います。

マンリーコのヨン様(リー)は、2011年MET来日公演の「ドン・カルロ」でタイトルロールを演じ、Dimaとは今年のMET「ドン・カルロ」でも共演。
今回が3回目の共演となりますが、トロヴァトーレでの共演は初めて。

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マルちゃんで見慣れてるマンリーコなので、登場すると「ほそっ!」というのが第一印象。
マルちゃんと同じ衣装を着てるように見えない!(笑)

しかし、彼は生で聴けばわかりますが、細身の体に似合わないすごい声量を持っています。
いい声してますし、テクニックもあると思います。
演技がやや一本調子で表情のバラエティが乏しく、硬さも見られるので、このへんがもう少し改善されれば大活躍してくれるのではないでしょうか。
今後に期待!

■第2幕
ザジックのアズチェーナに関しては、皆さん文句のつけようがないでしょう。

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METで最も多くアズチェーナを演じてるそうで、「この役は誰にも負けへんで!」という気概を感じます。
彼女のアズチェーナを見れば、「イル・トロヴァトーレ」の主役(物語の中心)はアズチェーナであることに納得させられます。

メゾにしてはやや弱い可愛らしい声の持ち主だと思うのですが、いつ聴いても"Condotta ell'era in ceppi"の迫力には圧倒されます。
自分の母親の火刑を目撃し、自分の息子を炎に投げ込んでしまう件には背筋が寒くなるほど。

どうでもいい話ですが、アズチェーナがマンリーコの傷口の包帯(?)をナイフでピッ!とはがすところ、今回上手くいかなくて、ザジックさん最後は手ではがしてましたけど、その時マジックテープがはがれるビッ!という音が・・・。
マジックテープで貼ってあるんや・・・・

個人的にはルーナ伯爵の最大の見せ場・聴かせ場はこの第2幕だと思っています。
なんといっても"Il balen"がありますから♪

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今回ほどこの"Il balen"が心にしみたことはありません。
もちろん好きなアリアではありましたが、こんなにも美しく、心を揺さぶられたのは初めてでした。

確かDimaは以前、このアリアを「とても難しい」と言っていたように思うのですが、今回の名唱に接すると、彼自身もこの曲に対する殻を破ることができたのかも。

Dimaが"Il balen"の最後に跪くスタイルは初めて見ました。
そして跪いたまま、観客からの文字通り嵐のような拍手と歓声を受けて顔を上げたDimaの目には・・・・涙が光っていました・・・・。

Dimaが目を潤ませ、あんな表情を見せるなんて驚きでした。
あの表情を見て、心を動かされない人がいます!?

やはり彼はこの3か月、いろんな意味で本当に辛く苦しい日々を送っていたんだろうな・・・・。
そう思ったら、自然とこちらの目にも涙があふれました。

初日は初日の感動があると思いますが、このHDの日は彼にとっての最終日。
しかもHD上映とあって、3日間やり遂げたことへの例えようのない感動が、彼自身の胸にこみ上げてきたのかもしれません。

"Il balen"はしばらくDima以外、誰のものも聴きたくありません。

後ろを向いて上着のポケットに手を入れたのは、血糊の用意ね~♪と思っていたら、剣をシュバッ!と抜く音が聴こえ、カメラが捉えた時にはもう手が血に染まってた~orz
剣で手を切るところが見たかったんだけどな~(T_T)

2011年はかなりクレイジーな伯爵を演じてたので、「どうしちゃったの!?」とツッコミまくってたけど、今回の気高い伯爵だと静かな情熱を内に秘めてるって感じで、かえって不気味だったかも・・・。

ところで、このシーンでルーナ伯爵が言う「神の力でさえ、私からそなたを奪うことはできない」という言葉。
これについて、今回のHDをご覧になった方のツイートでとても心に残ったものがあったので、こちらに紹介させていただきます。



この表現、本当に素晴らしいです!
何度も読み返してしまいました。
こういう表現力が私にもあれば、皆さんにもっと感動を伝えられると思うのですが・・・・

マンリーコに顔を切られて再び血まみれの伯爵さま。
なんかこの2幕は常に血だらけですな~

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マンリーコの従者たちにボコボコにされた後、ガクッと力尽きた感じで突っ伏してしまった伯爵。
フェルランドが心配そうに駆け寄ってきたりして、ちょっと印象に残る幕切れでした。
2011年はこのへんハッキリ見えなかったんだよね・・・・。


Part2へ続く・・・

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この記事へのコメント

花宴
2015年11月08日 02:56
沙羅さん、レビュー待ってました〜🎶 感激が蘇ってきたわ〜(涙)! そうですね、やるな〜ディーマ、と思ったのはやはり2011年とは役作りのアプローチを変えている事、前回はまるちゃんとは同期生的というかマンリーコと同世代的な若輩者(笑)のルーナという感じだったのが、今回はぐっと硬派で正統派の伯爵❤ マンリーコ&レオノーラペアとのコントラストも良かったと思います。 ....今年も終盤ですが....2月(でしたか?)のメトの発表の時は、”なんだ、またルーナ....”なんて不遜な感慨持ってたところへ、6月の衝撃発表、そしてステージへの復帰。 あのイルバーレンを歌い終わった後の観客の熱狂と彼のキラリと光った眼を見ると、この人はやはり歌うべき人、ステージで歌って蘇る人と、感無量でした。 完全治癒の日を心待ちにしています。
2015年11月09日 00:57
◆花宴さん
お待たせしました~♪

いや~、Dimaも変わりましたよね!
以前は同じ役を演じるのは飽きるとかで、ラジオからも「飽きてんな・・・」ってわかる時があったぐらいだったのに、しっかりアプローチを変えて、観客を飽きさせないようになったんですから!

ホント、あれだけぶーたれてた今シーズンのトロヴァ出演。
これだけ感動的なものになるとはね・・・

Dima自身も「舞台が自分の生きる場所」と、改めて悟ったのではないでしょうか。