【CD】 Rachmaninov Romances

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<演 奏>
バリトン:Dmitri Hvorostovsky
ピアノ:Ivari Ilja

<曲 目>
Sergei Rachmaninoff
1.一息つけるでしょう op.26-3
2.お前は覚えているか、あの夕べを (1893年)
3.いや、お願いだ、行かないでくれ! op.4-1
4.朝 op.4-2
5.夜の神秘な静けさの中に op.4-3
6.ああ、私の畑よ op.4-5
7.わが子よ、お前は花のように美しい op.8-2
8.夢 op.8-5
9.私は彼女といた op.14-4
10.私はあなたを待っている op.14-1
11.私を信じるな、わが友よ op.14-7
12.彼女は真昼のように美しい op.14-9
13.春の洪水 op.14-11
14.私の胸のうちに op.14-10
15.時は来た op.14-12
16.彼女たちは答えた op.21-4
17.A.ミュッセからの断片 op.21-6
18.ここは素晴らしい場所 op.21-7
19.なんという苦しさ op.21-12
20.すべてを奪われた op.26-12
21.昨日ぼくたちは会った op.26-13
22.すべては過ぎ去り op.26-15
23.夜は悲しい op.26-12
24.私は再びただ一人 op.26-9
25.聖なる僧院の門の傍らに (1890年)
26.キリストはよみがえり op.26-6

[録音:2011年7月13日~24日 モスクワ音楽院大ホール]


このCDが録音されたのを知った時、また発売日を知った時、早く聴きたくて待ちきれないぐらいだったのに、PCが壊れてしまってレポが書けなかったこと、なかなかまとまった時間がとれなくてゆっくり聴けなかったことなどが重なり、こんなに遅いレポupになってしまいました・・・・

今回の収録曲は、1曲をのぞいて全てお馴染み梅丘歌曲会館「詩と音楽」さんに日本語訳が出ていますので、そちらを参考にさせていただきました。
本当にありがたいサイトです。いつもお世話になり、ありがとうございます!

私が初めて聴いた曲は、「お前は覚えているか、あの夕べを」(1893年)「私の胸のうちに」op.14-10「聖なる僧院の門の傍らに」(1890年)の3曲で、ほかは過去のCDやリサイタルなどで耳にしたことがありました。

ホロストフスキーによるラフマニノフの歌曲の録音は、20年近く前の、彼がかなり若い頃のものが多かったので、その時の録音と比べると、ひとことで言って枯れたいい演奏になったな~という感じです。

私は過去の録音ももちろん好きです。
声の美しさは比類ないものですし、安定感も抜群。
ただ、少々力みがあったというか、「どうだ!上手いだろう!」といった、ドヤ顔的なものも少々感じられました

今回はそういう力みや、上手さをひけらかすようなことが全くなく、今、彼が個々の曲に感じているものが素直に表れているような印象でした。
以前の録音が【外への表現】だとしたら、今回の録音は【内なる表現】といった感じでしょうか。

50歳を前にして、やはり円熟の域に達してきたということもかもしれません。
だてに年はとってません!(笑)

実は今、近々聴きに行くドイツリートのリサイタルのために、そのプログラムの曲を予習しているところなんですが、こちらも美しい曲が並んでいて魅力的です。

ただ、ドイツ語の発音のせいか、リートは音にやや硬さを感じ、決められた枠の中で表現しなくてはいけないような、ある種の制約のようなものを感じたりするのですが、対照的にロシアン・ロマンスはロシアの広い大地を表すかのような雄大さ、広がりを感じます。

どちらにも、それぞれの良さがありますね。

歌曲というものは、短い1曲の中にとても濃いドラマが詰まっています。
私は詩を理解するのが苦手なので、詩の奥底にある深い意味までは理解できませんが、ラフマニノフの美しいメロディー、ホロストフスキーの夜の海のような暗く・深く、そして優しく温かい歌声に魅了され続けた1時間でした。

イリヤさんのピアノも秀逸。
上手いんだけど、決してピアノが目立つ演奏ではないんですよね。
控えめでありながら、歌に常に寄り添っていて優しい・・・・。

以下、特に気に入った曲について少しずつ。

「お前は覚えているか、あの夕べを」は初めて聴く曲でしたが、波の上を漂うかのようなピアノに載せ、とても柔らかな美しいメロディーが歌われます。
この曲だけ訳詞がみつからなかったのですが、英訳を読みながら聴いてみて、過ぎ去った愛の日々を思い返しているのかな~と思いました。
違ってるかもしれませんが

「朝」は、女性から男性への愛の告白を、朝の風景にみたてているそうですが、ホロストフスキーの歌は第三者として若い2人を見守るかのような、温かさを漂わせていました。

「夜の神秘な静けさの中に」は、私が最も好きな曲の一つ。
ホロストフスキー以外で聴いたことがないし、聴きたいとも思わないほど。
彼自身もこの曲が好きなようで、リサイタルのプログラムに入っていない時でもアンコールに入れることが多い一曲です。
そのためか、今回の録音では表現がもう染みついていて、とても自然体でした。

「ああ、私の畑よ」は、ロシアの農村風景を思い起こさせるような曲。
特に近年声が重くなって、低音の安定度が素晴らしいので、このような曲の魅力がいっそう引き立つようになったと思います。
この手の曲を聴くと、つい「ヴォルガの舟歌」も彼で聴いてみたいな~と思ったりするんですが♪

「わが子よ、お前は花のように美しい」も若い時に録音していますが、その頃はまだお子さんがいなかったかも?
今はしっかり父親の自覚もありますし、そう思いながら聴くと、我が子への愛があふれた温かさをいっぱいに感じたりするのでありました。

「私は彼女といた」は、2008年のモスクワでのリサイタル映像を見て大好きになった1曲。
2010年ウィグモアホールのリサイタルで、この曲がアンコールで歌われた時はとても嬉しかった~(涙)
あの時は日本語訳詞がみつからなかったのですが、その後、upしてくださったようで、先述の梅丘歌曲会館さんに訳詞が載っていました!
苦労して訳したけど、どうやら私の解釈とほぼ同じだったようでホッとしました(笑)

次に挙げる2曲は、"Russia Cast Adrift"に入っていた曲ですが、当時、英訳しか手に入らなかったので、その歌詞を見ながら何度も涙した思い出の曲。

その1曲は「私はあなたを待っている」
何度も繰り返される「あなたを待っている」という言葉。
だんだん盛り上がって、最後にもう一度、叫ぶように"Я жду тебя!"(=私はあなたを待っています!)と歌い上げるところが素晴らしい!

もう1曲は「彼女たちは答えた」
どういうシチュエーションなのか、ちょっとわかりにくい曲なのですが、答えの部分、「漕ぐのよ」「眠るのよ」「愛するのよ」にあたる部分が、それぞれ非常に繊細なピアニッシモで歌われていて、ゾクッ!としてしまいました。

「私の胸のうちに」も初めて聴きました。
なんとも不思議な感覚・・・・エキゾチックなメロディーが時折聴こえてくるものの、歌のほうは大きな音の跳躍もなく、緩やかな線を描いているかのよう。
この平面的なメロディーラインが、かえってホロストフスキーの声の魅力を引き立てています。

「ミュッセからの断片」、これこそ短い曲の中に大変なドラマを感じる1曲です。
間の取り方が素晴らしく、それによって中間部に絶妙な緊迫感が生まれています。

「なんという苦しさ」「いや、お願いだ!行かないでくれ!」のような、苦しさをストレートに爆発させるようなこれらの曲は、聴いているこちらまで苦しくなりますね・・・・・。
と言いながら、結構リピートしてしまうのですが・・・

「聖なる僧院の門の傍らに 」も初めて聴く曲でしたが、乞食の描写から始まり、最後にはその乞食が受けた行為と、自分の裏切られた愛を重ね合わせている詩の内容に驚かされました。

今回初めて聴いた3曲は、いずれも私にとって印象深いものでした。
やっぱり、ラフマニノフのロマンスは好きかも!



Rachmaninov: Romances
Ondine
2012-01-03

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この記事へのコメント

花宴
2012年03月05日 03:27
これ、良かったですね~♬ チャイコフスキーよりマスキュリンなラフマニノフの歌曲ですが、深く安定した今の彼の声にピッタリね(笑)! “夜の海”かぁ~、娑羅さん巧い(笑)!! 本当に雪に覆われた大地の声ですね! 5番とか9番は前出でやはり歌い込んでる上手さがありますが、個人的には21番が気に入っています。 23番も素直で素敵ね(笑)♪ 
Dama
2012年03月05日 20:36
娑羅さんと逆で、今「エルナニ」にはまってしまって、あの後、聞いてないのです。 HDが済んで、心が落ち着いたら、もう一度歌詞を見ながら、ゆっくりと味わい直したいと、思ってます。 だてに年取っていない声と歌い方でしたし、味わい深いお勧めCDでした。
2012年03月05日 23:59
■花宴さん
なるほど~、ラフマニノフはチャイコよりマスキュリンなのですね。
だから、Dimaにピッタリくるのかな?
もちろんチャイコも美しいのですが、ラフマニノフはなんとも不思議な魅力があります。

>雪に覆われた大地の声

花宴さんも巧いじゃないですか~(笑)
花宴さんは「きのう僕たちは会った」がお気に入りですか~。
私はこの曲ウィグモアで聴きました。
とっても切ない曲で、これも苦しくなりますよね~。
いつも、「彼女はどう変わってしまったんだろう?」と気になる私です(笑)
2012年03月06日 00:11
■Damaさん
今ちょっとバタバタしていて、ゆっくり「エルナーニ」にハマれないのですが、Damaさんがハマるお気持ちわかります。

私はいつも最初の1回は集中して聴きたいのですが、いったん気に入ると何度でも聴きたくなるので、このCDも早速ポータブルプレイヤーにダウンさせていただきました